ハロープロジェクト・キッズの進化

〜15人の少女たちのあゆみ〜

(このテキストは、2003年12月に記載したものです)


3.ZYX&あぁ!が奇跡を起こす(2003年7月〜2004年1月)

 

6月16日に第一報の後、7月6日にメンバーを含めた正式な形で、かねてより予定されていた

矢口+キッズのユニットが正式発表された。

ユニット名は「ZYX(ジックス)」。Z(絶対)Y(夢を)X(倍に)の意味を込めた名前で、

8月6日に「行くZYX!FLY HIGH」でデビューを飾った。

 

ZYXには梅田えりか、矢島舞美、嗣永桃子、清水佐紀、村上愛

参加、6人組で大人っぽいナンバーを歌い、予想外の楽曲をぶつけられたファンは一様に驚きを

隠さなかったとはいえ、ここしばらくのつんくワークスでは出色の出来だったことは事実であり、

登場初週に18位で登場する、まずまずの滑り出しを見せた。

 

また、この曲はハロプロ夏公演で披露されたが、名古屋では嗣永桃子が体調不良で岡井千聖が

続く東京では村上愛が学校行事で菅谷梨沙子が、それぞれ代打を努めた。オリジナルメンバー

で披露されたのは大阪公演だけといういわくつきではある。

 

また、夏のハロプロでは、キッズメンバーもバックダンサーで数曲に参加するなど、徐々にその勢

力範囲を拡大していった。

 

夏休みを過ぎ、9月も終わりを告げる頃。

TX系「ハローキッズ」では、キッズがふたりで登場し、東京近郊のアミューズメント施設を訪ね

て、その見所などを体当たりで紹介するコーナーが開始された。キッズ不足に苦しむキッズヲタに

は福音であったが、TXの哀しいところで、例えば中京地区では放送がないらしい。

 

そして、9月12日に、再びとんでもないニュースが出てきた。

 

新ユニット「あぁ!」結成

 

メンバーは田中れいな(モーニング娘。)、夏焼雅、鈴木愛理の3人。

これはもう、UFAが勝負を賭けてきたとしか考えられないパターンであった。田中れいなは

娘。6期生(しかも最年少)でありながら先輩を差し置いてメインを奪った実力派だし、鈴木愛理

はオーディションの時の歌が抜群であった。夏焼雅もつんくPの選球眼に適った素材であるから異論

ない。

 

デビュー曲「FIRST KISS」(10月29日)には、まことに度肝を抜かれた。

いきなりバラードで出てきたのは、まさに勝負に他ならない。ある程度腹の支えがないとすぐに

ブレてしまうから、この曲は相当の完成度であると言える。さらに鈴木愛理に関して言えば、ソロ

パートが3人のうち最も多い。さらに、間奏のファルセットの部分は、まさかの愛理パートとなっ

ている。8度以上の跳躍も全く隙間なくスムーズに跳んでおり、技術の高さを知らしめた。

 

11月1日にはキッズ系のユニットでは初となるFC会員限定イベントが六本木・ラフォーレミュ

ージアムで開催された。

全国でここだけの開催となったため、全国各地から1500人ほどのファンが殺到した。

歌披露・トーク・抽選会・握手会という内容で、抽選会までは約55分という、破格の

イベントであった。

もし、このテのイベントを、ZYXでやった場合はどうなるかと、冗談半分、

マジ半分で語る人間もあったほどだった。

 

前後するが、10月4日に放送された「めちゃイケSP」では本編の運動会終了後、余興での一幕

「岡女中等部」としてキッズ全員が出演した。これまでTXの枠にガッチリはまっていたキッズ

が、初めてCXという全国放送系に進出した記念すべき瞬間でもあった。

ここでは前年11月に行われた「スポーツフェスティバル」以来2度目の「LOVEマシーン」を

岡村先生と披露した。それだけでなく、岡村先生とコントっぽいことまでしており、視聴者に相応の

アピールができたと思われる。

 

そして、11月に入ると、キッズはいきなり世界の舞台に踊り出た。

 

11月1日〜9日までの9日間、東京・渋谷で行われた「第16回東京国際映画祭」

のコンペティションにて上映される「ほたるの星」の出演者として、

キッズから菅谷梨沙子、熊井友理奈、岡井千聖の3人がドレスアップして、

オープニングセレモニーの赤じゅうたんを歩いたのである。

映画自体は主演の小澤征悦氏が演ずる新任小学校教師に、心を開けずにいる女の子役として、重要な

かかわりを演じる菅谷梨沙子、という構図になっており、熊井・岡井の両名は、アンサンブルメンバー的な

扱いになっていた。

 

8日に行われたコンペティション上映(午前10時30分上映・渋谷・オーチャードホール)後には、

菅原浩志監督と小澤氏・菅谷の3名が参加しての「ティーチイン」というイベントが持たれた。

国際映画祭の、しかもコンペティション部門に出ることだけでも大したことなのに、さらに舞台に

上がって観客の質問に答えるなどというのは、凄まじい体験である。

もっとも、国際映画祭とはいえ、前方に陣どったのはヲタなどであり、その行動に警備員が目を光ら

せる始末であったが。

 

映画そのものは1時間40分ほどの作品で、心温まる佳作である。その映画の中で、菅谷は心を閉

ざしてしまった少女の役に体当たりでチャレンジし、見事女優になった。カメラがそのオーラに引

き寄せられるように近づいていくというから、まったく大したものである。もはや「子役」などと

いうレベルを凌駕している。残念ながらコンペティション部門では無冠となったが、2004年の

公開に向けて暖めていきたい作品であった。


11月には、Hello!Project Sports Festivalが開催された。

ここでは競技に参加することはもちろん、最後のライブステージにもキッズが登場するようになった。

12月10日にセカンドシングル「白いTOKYO」をリリースするZYXも、一足早く曲を披露した。

大阪会場・東京会場での披露となったが、先となった大阪会場から大評判が聞こえてくる状況だった。

入場料3800円というリーズナブル感もあって、会場には親子連れなど大勢の人が集まった。

そんな中での曲披露は、絶好のプロモーション効果をもたらしたと言えよう。

オリコンのデイリーチャートによると「白いTOKYO」は初日3位という素晴らしい滑り出しとなった。

そして、キッズにとっては転機とも言える2004年を迎える。 

年始からは恒例の「Hello!Project」のコンサートがあった。

ZYXの曲では、曲にコールが入るなど、すっかりキッズも受容されてきた感が強くなっていた。

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