ワインは冷えている (SANSO/2)



 思い出した。クリスマスだ。

「…ぁ…」
 邪子は微かに息を出すだけだった。今と同じ様に…クリスマスも。
「う、ん、ん…」
 俺も声を必死にこらえる。俺ばっか声出してたらおかしいもんな。

 とか何とか。
 駄目だ、もう…。

「!」



 クリスマス以来だから…まだ2週間とちょっとか。
 何だかな。こいつとこうやっていられるのって、いつまでなんだろうか。

 夏に進路調査票なんて紙切れを提出しなきゃなんなくて、ちょっとだけこいつと真面目な話をした。
 邪子はアメリカに行きたいと、英語の勉強をしたいと俺に告白した。
 俺もそれでいいんじゃねぇかと、相槌を打った。

 夢だとか未来だとか、キラキラしてるものに同調する事が仲間だなんて思い込んで、何も判らずに相槌を打った。


「妖。」
「ん?」
 邪子は下着を着け終わると立ち上がってジーンズをはく。
「2月に一端アメリカに行ってくる。」
「へぇ。一端って事ぁ、帰って来んの?」
「まぁね。卒業式なんか出たくないけどさ。」
 邪子は天の邪鬼に口の端をゆがませた。
 俺はわざとフッと笑った。

 未来へ進む。
 動き出す歯車。

「じゃ、帰んね。」
「莫迦。送ってやんよ。」

 変わりゆく日常。



 胸に飲んでる酸素が、少し足りない。



20040517〜20040707 ナガレバヤシ   Qujila , SANSO , MIX


ワインは冷えている (リクエスト/1) へ