―内部との関わりを重視したプログラム―

病院では1台のベッドで全ての日常生活が営なまれます。
そこはプライベートであり、パブリックな空間であると言えるでしょう。
それを柔軟にスイッチさせるカーテン。
このカーテンを自分の好きなものに掛け替えたり、造作したり、スクリーンがわりにアニメーション作って上映したり、建物を作ったりと遊びながら、今まで当たり前に使っていたカーテンやそれを取り囲む空間への新たな視点を積極的に取り込んでいきます。
この体験を通して、仕切ることが隔てることでなく、むしろそこへの関わりかたによって、窓のように内側の快適さを作ったり、外側にむかって開き、つながっていく装置としてカーテンを機能させていきます。

■プログラム内容
<展覧会>
会期:2004年3月15日(月)〜 26日(金)
会場:大阪市立大学医学部附属病院内各所
開館時間:午前9時〜午後4時30分
休館日:病院休診日(土・日・祝日)
アーティスト:
飯田紀子(美術家)、岸健太(建築家)松本力(絵かき/映像(アニメーション)作家)

 後期アート・プログラムの成果発表として、飯田、岸、松本企画のワークショップで制作された子どもたちの作品や、ワークショップ期間中に希望する子どもたちに貸し出された作家制作のカーテン作品、ドキュメント写真を院内各所にて紹介します。
また、展覧会期間中には外来に通う子どもたちを対象とした上映会や、ミニワークショップも計画中です。

<ワークショップ>
 全11回を、3人のアーティストが担当します。ここでは、「カーテン」をモチーフに、それぞれの造形的、映像的、建築的視点を活かし、
物として、空間として、またそれを介したコミュニケーションの可能性を具体的に示唆していきます。
○環境設定
プログラム期間中は、ワークショップ実施日に限らず、継続して以下の環境を設定します。
(1)カーテンの貸し出し
 希望する子どもに貸し出し、自分のベット回りのカーテンと掛けかえます。
・ 一般的な既製品のカーテン(約10種。担当者ごとに種類が変わります)
(2)活動レポート「カーテン・ニュース」の発行
 活動の様子をレポートにまとめ発行し、病棟内に展示したり、ホームページ上で公開します。
(3)出前キットの貸し出し
 子どもたちがやりたい時に体験できるよう、ワークショップ実施日に出前用として使用するキットに、使い方、作り方などの表示を加え、 自由に持ち出しできるようにします。
☆出前キットとは?
毎回のワークショップの内容をコンパクトにまとめ、トランクにつめたものが「出前・キット」です。
キットには、各回の実施内容にあわせた体験物と制作道具、材料一式が入っています。このキットは、また、小児科病棟にいる人なら、だれでも借りることができます。患児や兄弟だけでなく、大人のための貸し出しも可能です。
体験物、制作一式、共に方法を簡略化し、ベット上で横になりながらでも扱えるよう工夫します。

○プログラム・プラン

1 <カーテン・ラボ>飯田紀子(美術家)(全5回)
 ワークショップの場を「カーテン・ラボ(研究所)」と設定。さまざまな視点から捉えたカーテンを、身体を使い、遊びながら体験してゆき
ます。
@<カーテン・ラボ vol.1>「スイッチ、ザ・カーテン!」
自分の作品や所有物につけるオリジナルマーク(スタンプ)を、ゴムシートで作ります。このマークは「カーテン・ラボ」研究員IDカードにもプリントし、名札かわりに使えます。
また、医療用カーテンに一般家庭用カーテンを接続し、カーテンのいれかえを体験します。
A<カーテン ・ラボ  vol.2>「プリント、ザ・カーテン!」
そうじ用粘着テープつきローラーとフィルムケースをベースに、さまざまな材料を貼ってスタンプを作ります。このスタンプを使い、無地の医療用カーテンにプリントすれば、オリジナルの模様がついたカーテンに早変わり。
ミニカーテン(医療用カーテンを幅約10センチに切ったもの)にプリントすれば、寝ながらでも手の届く距離で、模様を楽しむことができます。
B <カーテン ・ラボ  vol.3>「プラス、ザ・カーテン!」
マジックテープがつく布地で作ったカーテンをベースに、身の回りにある既製品から自分で作るワッペンまで、好きなモノを貼ってカーテンを自分好みに変身させます。
C<カーテン ・ラボ vol.4>「リンク、ザ・カーテン!」
透明ビニールを使って、ポケットを作ります。これは、インターネットのメールボックスのように、外部からの情報を受け取ることもできれば、自分から情報を発信していける機能ををもったポケットです。
カーテンにつるしても、病室入り口に設置してもよく、ワークショップ終了後には、スタッフがワークショップリポート「カーテン・ニュース」をポケットに配ります。
D <カーテン ・ラボ vol.5>「ラボ・コレクション」
トイレ、プレイルーム、電話ボックス、食事タイム、リハビリタイム、医師、友人、身の回りのモノなど、病棟内で必要と思われる場所、時間、人、モノを探し、そこに一番似合うカーテンを作ったり、選んで設置します。カーテンを設置する場所を探し、考え、設置することによって、仕切ることへの新たな役割や使い方、楽しみ、心地よさを、自分の手でつくり出します。

2 <絵巻物マシーンをつくろう!>松本力(絵かき/映像(アニメーション)作家)(全3回)
@「テレビ石型絵巻物マシーン」

A「回り灯ろう型絵巻物マシーン」
B「映写機型絵巻物マシーン」
子どもたちが絵を描き(どう描いてもいい、何でも良い、好きなものの羅列でも、絵にストーリーがある時系列的に連続したものでも)、それを手のひらのサイズ、ベットサイズ、部屋サイズの絵巻物マシーンで映写します。原画となる絵巻物は、長尺の紙に描いてもらうようにします。手のひらサイズのものは、フィルムケースの高さ以内が、紙の巾となり、部屋サイズのものは、ビデオカメラの底部を通る巾となる(約7〜8cm)。ビデオカメラは、どのマシーンも共通なので、原画はどのマシーンでも映写可能です。
ベッドサイズの回り灯籠型の絵巻物マシーンについては、カメラを使わず、そのまま目で鑑賞するので、薄い紙あるいは乳白フィルムの高さが巾となります(約15cm、直径約8cm)。
前者2つのマシーンは期間中、好きな時に見られるよう貸し出します。部屋サイズの絵巻物マシーンでは、ある程度、共同製作となり、最後には絵巻物アニメーションの上映会において、参加者の肉声による音入れをします。音楽でも良いです。場合によっては、私が木琴で伴奏をします。異なる大きさの映写機を使うことによって、子どものおかれた環境に合わせて、さらに映像を楽しむことができると思います。
子どもたちの描いた絵が光と動き、時間を伴う映像へと生まれ変わる瞬間を、身近な材料を使うことで、生活の中で体験する、私でもこれはまったく同じ過程です。
これが、絵巻物マシーンによる、絵巻物アニメーションとなります。
※ 絵巻物マシーン・・・松本オリジナルの映写機。

3 <カーテン・ガーデン>岸健太(建築家)(全3回)
@<カーテン・ガーデン vol.1>「カーテン・ガーデン:庭を描く」
A<カーテン・ガーデン vol.2>「ボディ・ガーデン:庭を着る」
B<カーテン・ガーデン vol.3>「プラネット・ガーデン:庭を宇宙へ」